日々の生活の中で徳を積む
今こうして、私の八足の前に、お湯のみが出させていただいておりますけれども、こんなふうにして会長様にも、入り込みの女の青年さん方が、会長様の前にお茶を出させていただくのですね。
誰しも丁寧に、器もきれいに洗って、中に入れてあるお湯も、今日は暖かいからちょっとぬる加減に、今日は寒いからちょっと熱めにというふうにして、心して心して勤めさせていただくわけでございますけれども、
会長様は、「そうして皆が心して持ってきてくれたお茶、また、ああ面倒くさいなあと思っていい加減にいれて持ってきてくれたお茶、僕も人間だから、どんな気持ちで皆が持ってきてくれるか、僕は分からない。けれども、自分と神様が分かるだろう。知っているだろう」とおっしゃった。
「僕は、いい加減にいれてきてくれても、喜んでいれてきてくれても、『ああ、どうもありがとう。お湯を頂くからお話もさせていただくことができる。ああどうもありがとう』と言うて、運んできてくれた者に心でお礼を言う」とおっしゃいました。
けれども、ここで、徳・不徳という問題で、ああ会長様に喜んでいただこうと思って、心していれてきたとしたら、その方は徳を積ませていただいております。
丁寧に形だけ礼儀正しく持たせていただいても、心が違っていたら、会長様に毒を飲ませていることになる。因縁を積んでいる。
だから、徳を積ませていただくということは、働いたから徳が積める、そういうものでもないと教えてくださいました。
「僕は座っていて、持ってきてくれたお湯を頂戴して、お話をさせていただく。どうもありがとう、ああご苦労さん」
会長様は、365日、朝勤めにお出ましくださった後、朝席というて、一時間から一時間半くらいお話をお勤めになられました。
もうぼつぼつお帰りになられるなというと、会長様は必ずこうやってご自分でお湯のみのフタをされて、さらに、下げる人が下げやすいようなところに置かれる。
また、必ずお火鉢が置いてございますけれども、そのお火鉢の火に灰をかぶせなさる。
会長様の前には、ずーっと役員さんが座っていますので、お湯のみのフタは開けっぱなしで、火鉢の火に灰をかぶせないでお立ちになっても、誰もなんともいう者はございません。当然のことですから、そばに座っているお互いが片付けさせていただけば良いだけです。
だからというて、会長様は、飲みっぱなしの、やりっぱなしということは、一度もなさったことがございません。
必ずそうして火に対して、いちいちお口に出して言葉はおっしゃいませんけれども、「ああ、ありがとう。お前さんがいてくれたから、今日もこうやって暖かくして、お話をさせていただくことができたよ。ああ、ありがとう」と言って、火に対してお礼を言われる。
そうして、「じゃあ僕はこれで奥に引けるよ」とおっしゃってね、お立ちになられるわけでございます。
そうすると、必ずお廊下にですね、スリッパを揃えて「ありがとうございました」といって控えている者がおります。
そして、奥にお引けになられるわけでございます。
一日や二日なら、誰にもできます。
会長様は毎日変わらずお勤めをくださる。
そんなことをなさらなくても、後片付けをする者はいっぱいおる。
おるからというて、飲みっぱなしの、やりっぱなしということは、断じてなさいませんでした。
「これが天理教だよ」と会長様がおっしゃった。
「こうやっておくとね、奥へ引けてから、さあどこかお散歩に出かけようかなあと心で思っていると、誰かが気がついてくれる。そして、お玄関に履物を揃えて、『行ってらっしゃいませ』といって見送ってくれる人がある。これが天理教なんだよ」
言われてみますと、長い間、私は会長様のおそばにおいていただいて御用をさせていただきましたけれども、一度も、こうやっておくれ、ああやっておくれと、頼まれたことはございませんでした。
自分から気がつかさせていただいて、ああ、こうさせていただいたら良いな、ああさせていただいたら良いなといってですね、気がついて勤めさせていただきました。
会長様のほうでも、あるいは会長様の思われることと、こうしたいなと思われることと、ああこうさせていただこうと思う私の心と、違っている時もあったと思います。
けれども会長様は、そんなことをしちゃいけないよとか、そんなことをしてくれなくてもいいよ、こうしておくれと、おっしゃったことは一度もございませんでした。
「ああ、どうもありがとう、ご苦労さん」とお礼を言ってくださいました。
私たちは当然、勤める者なの。
当たり前のことですけれども、それでも当たり前だとはおっしゃらなかった。
「ああ、ありがとう。どうもありがとう」と言って、お礼をいってくださいました。
以上
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