草餅の御話

 

 喜多先生という役員さんがおられました。

後に、愛和布教所の初代の所長さんになられた方でございますが、まだ青年時代でございます。

当時は、男さんも女さんも一週間に二回くらい、代わり合っておたすけの日をお与えいただきまして、おたすけに出させていただいた時代でございます。

そんな時に、会長様が、「お互いに正しく真実に通っているからというて、男さんと女さんはいけないよ。男さんは男さん、女さんは女さんで、あまり大勢でもいけないね、二人くらいずつ、一緒に出させてもらいなさい」こんなふうに、教えていただいておりました。

 

ある時、先生が、私に、面白いお話というては何でございますが、おたすけのお話を聞かせてくださいました。

 

ある田舎のお家におたすけに出させて頂いたんだそうです。

そうしましたら、先方さんは、「ああ先生、良いところへきたよ!」というわけですね。

良いところへきたということは、そこのお家では、ちょうど草の花が採れるときでございまして、その葉っぱを摘んできて、草餅をついていたそうです。

ちょうどできあがる頃だった。

「ちょうど出来上がったから、先生、食べていきなよ!」とまあこんなふうに、相手さんがおっしゃってくださった。

見るとねえ、それはもう美味しそうなんですね。

それで、喜多先生という方は、身体の大きい方で、思わずこうゴクンと生唾を飲んだという。

けれど、初代の会長様が『おたすけにいったら、お茶一杯は良い』とおっしゃった。

『お話をさせて頂くんだから、喉が渇くから、お茶一杯はいただいても良いけれども、いらん物を頂いちゃいけないよ』こんなふうに、教えて頂いておりました。

それがこう、ピーンと、頭に浮かんでまいりました。

「いやあ、実はねえ、今ね、食べてきたばっかりでね。お腹がいっぱいでもう何にも入らない。まあ一言、神様のお話を聞いてもらいたい」と言って、お話をお取り次ぎさせて頂いて帰ってまいりました。

 

そして、会長様のところへお部屋に伺いまして、「ただいま、おたすけから帰らせて頂きました。どこそこの、どういう所に」と、簡単にお話をさせて頂きました。

会長様のご様子を伺ったら、ちょうどね、3時のおやつの時間で、会長様の前に、なんと不思議な事にね、今見たばっかりの同じような草餅がね、お皿に2個のせられていた。

そしたら、会長様が、「ああ、喜多。いいところにきたよ」とおっしゃってね。

「さあ、僕はもうお腹がくちいくて(いっぱいで)、食べられないから、お前さん食べていきなよ」とおっしゃった。

そして、そのひとつを、会長様が先生に下さった。「そこで食べておゆき。一つばかり持っていっても、みんなの目に毒だから、ここで食べておゆき」と、おっしゃってですね。頂戴をしました。

 

そういうお話をしてくださいました。

 

ですから、神様は見抜き見通しでございます。

 

よく褒められると、「いやあ、お陰様で」と、こういうふうに言葉を返しますね。

「『お陰様で』というのは、私は、陰へまわるほど、人さんの見ていないところほど、どなたに見られても恥ずかしくないように、正しく真実に通らせてもらってますよ。だから、結構なんですよと、そういう意味なんだよ」と、よく会長様が教えてくださいました。

 

また、余談になりますけれども、世間のことわざに、悪事千里を走るという、ことわざがございます。

悪いことほど、社会の人は、なるべく人に分からんように、土の中に埋めて分からんようにしたいと思う。ところが、そういう事ほど、人さんに伝わってまいります。

内緒の事ほど、悪い事ほど、人さんに伝わっていく。

それを、悪事千里を走るということわざになっているんですが、お道は世界と裏腹でございまして、世界と裏腹なんで、社会で当たり前ということが、お道を聞かせて頂くと、たいへん天理天則に合わせて、間違っていることがたくさんございます。それをこと細かに、私どもは長数年に渡って、初代の会長様に教えて頂いたわけでございます。

 

私は、このお話を、先生から聞かせていただいて、「ああ、何とも言えんもんやなあ」と思いました。

会長様のおっしゃることを、会長様が見ていなくっても、たとえ、よもぎ餅ひとつでも、「ああ、会長様から教えて頂いたんだから、食べちゃいけないな。貰っちゃいけないな」と、いうてですね、頂かなかった。

それがですね、帰ってまいりまして、会長様のところにご挨拶に伺ったら、

「ああ、いいところへきたね!いいところへきたね!」とおっしゃってですね、「さあ、僕は、もうお腹がいっぱいだから、お前さん食べておゆきよ」とおっしゃって、同じような草餅が、会長様の前に出ていてそれを頂戴した。

会長様は、「僕が良いというんだから、安心してお食べ。因縁にはならないよ」と、おっしゃってくださった。

会長様がお許し下さったことですから、間違いのないことでございますけれども、こんなふうにして、私たちは、おたすけを、正しく、真実に、会長様に教えて頂いたとおり、守る努力をさせて頂いたのでございます。

 

 

愛春布教所ホームページ since2006.12.26 (C)All Copyright AIHARUFUKYOSHO

天理教愛町分教会愛春布教所 静岡県伊東市宇佐美1008−3

 

以上

 

※恐れ入りますが、お話の転載を一切禁止いたします(YouTube含む)

本文中に、適切ではない言葉を使用している場合がございますが、お言葉等の意味合いが変わってしまうため、そのまま掲載をさせていただいております。何とぞご了承ください。